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Those Last Days
2016-2017

9月、選手権の敗退と同時に、引退が決まった。
それまで生活の全てを占めていたサッカーが突然消えたことで生まれた心の穴は、来たる大学受験への不安を掻き立てるには十分だった。

ある日、ふと、いつかの部活後のロッカールームでの情景を思い出した。
その日以来一度も思い出したことなどなかったが、あのとき八十嶋が言った冗談まで覚えていた。
当時はそれが当たり前の日常で、プレハブの校舎や水しか出ないシャワーの愚痴を言い合っていたが、
あとになるとどうもそんな、とるに足らぬ小さな記憶の断片に救われるのだった。

しかし、その記憶が頭の中から消えたら、その日は存在するのだろうか。
確かに起こったはずの様々な出来事も、何らかの形として残らない限り、消えてなくなってしまう。

こうして私は、高校生活最後の半年を写真で記録し始めた。
いつかつまずいて苦しんでいる自分に、過去への切符を渡すために。

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